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  環境教育カリキュラムのデータベース構築

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市販のデータベースソフト「ファイルメーカーPro」を活用したデータベース構築事例を紹介いたします。

「田んぼ水族館」など環境教育の先進的取り組みで知られる和歌山県の熊野川小学校から「環境教育カリキュラムを手書きのカードにまとめたが、これをコンピュータで処理できないか?」という相談がありました。このデータベースは、小学校の6年間、全教科に渡って個々の教材が持つ「環境教育的要素」を明らかにし、点数で評価した独自のもので、カード数は1000枚に及ぶものでした。



先生方が作成していたカードの見本。赤字が手書き部分。

主に使用したソフト

  • ファイルメーカーPro (データベース制作)
  • ファイルメーカーDeveloper (データベース入力フォーム制作)
  • Jedit (データテキストの調整)
  • Adobe PageMaker (マニュアル制作)

開発期間

 最初の打合せから完成まで、約2ヶ月。

制作の過程

学校側のコンピュータ担当の先生と何度か打合せをしたところ、要望はだいたい以下の3点でした。

  • 出来上がったデータベースをいろいろな条件で手軽に検索したい
     例:学年ごと、教科ごと、点数ごと

  • 検索やソートした後、カラープリンタを使って様々な出力フォーマットで印刷したい
     例:一覧表、時系列の流れ図

  • 入力は負荷が大きいので、何人かの先生で手分けして行いたい

データベースの構造、検索条件のパターン、出力のフォーマット等の仕様が固まったところで、ファイルメーカーPro でテンプレートを作成しました。



テンプレートの入力画面。右に並んでいるのがスクリプトを実行するボタン群。



環境項目と点数を一覧するレイアウト



環境項目をキーに検索し、時系列で並べた流れ図のレイアウト

ファイルメーカー Pro を選んだ理由は、主に以下の4つです。

  1. 熊野川小学校で既に購入済みであった....

  2. このソフトはカード型のデータベースで、初心者でも比較的取り組みやすい。レイアウト変更にも自由度が高く、様々な出力フォーマットに対応できる。

  3. ファイルメーカー Developerではランタイムアプリケーションを制作・配布することが可能なため、ファイルメーカーがインストールされていないマシンでもファイルの閲覧、入力等が出来る。
    ※ 入力作業の分割が条件であったが、学校が所持しているファイルメーカーProは1パッケージであった。
      また、複数の先生方が自宅に持ち帰り入力することも可能になり、効率的だった。

  4. Macintosh / Window 間でファイルのやりとりにほとんど問題がない
    ※ 学校や先生方の自宅マシンは Windows が大半であったが、Macintosh で作業される先生もいた

      Mac/Winで色表現やフォントの違いがあるため、レイアウト画面制作は弊社のWindows環境で行った。

先生方の中には、普段ほとんどパソコンを使っていない方もいたので、テンプレートとともに操作マニュアルを制作し、このソフトの使い方や具体的な入力の手順をまとめました。山梨から遙か熊野古道へ遠征し、熊野川小学校のコンピュータルームで、実際のソフトの使い方の指導も行いました。制作しておいたマニュアルに基づいて、それぞれの先生が自宅や学校の空き時間に教材レコードを入力していきました。

テンプレートはレコードの入力期間中も弊社内で何度か改良を繰り返しました。先生方が入力した複数のレコードファイルは弊社で集め、完成品のテンプレートにデータを取り込んで納品しました。

制作上のTips

ファイルメーカーProでは専用のスクリプト言語が標準で用意されています。これを画面レイアウト上でボタンに割付けることも可能なため、比較的簡単にユーザーインターフェースを構築することができます。例えば、この環境教育カリキュラムデータベースでは、ある検索条件の結果を決まったフォーマットで出力する場合、検索から印刷までの一連の操作を、レイアウトを切り換えながらウィザード形式でナビゲーションするようにしています。



ウィザード画面の例。右下のボタンをクリックして次のステップに進む。

今回のクライアントの要望の中には、難問もいくつかありました。ひとつめは、同フィールド内に複数の色の文字を混在させたいというものですが(下図)、標準の機能では出来ないようでした。そこで、色付け用の仮フィールドを用意し、ここに文字を一度置きます。それをコピー&ペーストすると色の情報が残ります。色ごとにこれを繰り返し、1つのフィールドに集めるというアクロバティックな方法をとりました。



色分けの例。ここでは環境点数11点以上が赤、1〜10点が青、それ以下を茶で表現している

もうひとつは、全学年の一覧表フォーマットでは1学年を1列に納めたいというものでした。
これはしごく自然な要望なのですが.....難がありました。レイアウトで段組を6つ設定するのは可能なのですが、改行ならぬ「改段」を任意の位置で行うことが出来ないのです。1つの段がいっぱいになるまで次の段が使えません。学年ごとに教材の数が違うので、一列が埋まらない場合は意図的に空きレコードを追加するという苦肉の策で対処しました。

最後に、細かいことですがフィールドへの入力は出来るだけ値一覧(下図)を使い選択方式にすることで、ユーザによる文字入力を極力少なくしました。時間の短縮はもちろんでが、今回のようにスキルのバラバラなユーザが分割してデータを入力した場合、イージーミスや文字(全半角や数字表記の統一、機種依存文字や不正キャラクタ除去など)をチェックする必要があると思います。

個々の単元名等どうしても文字入力が必要とする部分もあったため、念のために、今回は一度全てのデータを弊社でテキストベースにまとめ、Jeditの正規表現を利用してチェックをしました。検索やソート、スクリプトを正確に機能させるためには、今後レコードが追加変更された際にも、何らかの管理は必要になるでしょう。



場所を選ぶチェックボックス



学年を選ぶリスト



点数は3つの記号から選び、×=0点、○=1点、◎=3点で合計点が自動計算される。

今後の課題

技術的な課題がいくつかあります。
いろいろと自動化する事柄が増えてスクリプトが複雑になっていくと、実行速度がどんどん遅くなっていきます。今後、速度や機能に満足できなくなった場合は、ファイルメーカーPro のテンプレートの域を出て、高速なデータベースソフトをバックエンドに移し、ユーザインターフェースをオリジナルで開発することも必要になってくるでしょう。そうなると、もちろんそれなりの予算や時間が必要になってきます。

それと、もっとも気がかりなのは今後の運用やメンテナンスに関する問題です。
残念ながらこのデータベース完成後、担当の先生の移動などで弊社による継続したサポートは行っていません。これから教科書が改訂されるたびにデータを学校内で修正していくことになります。前述のように、文字やイージーミスをチェックする担当者は学校内で配置しなければならないでしょう。また、スクリプトが正常に機能しないトラブルもあるかもしれません。データベースシステムの場合、特に顕著だと思いますが、完成したあとの運用のルールづくりや正しい管理体制が、活用のカギなのです。
もちろんサポート依頼があれば対応するつもりですが、どのようなソリューションにおいても、限られた予算の中でメンテナンスのしやすいしくみをつくることは、弊社にとって大きな課題です。

所 感

今回、初めて小学校のコンピュータ教育の実際を目にすることができました。ウワサには聞いていましたが、立派なコンピュータルームや、活発なコンピュータの授業を見るに付け、自分の小学校時代(ン十年前!)とはまさに隔世の感があり、驚きでした。それにしても、生徒へのコンピュータ教育の力の入りように比して、先生の業務にももっとコンピュータが利用出来ないものかなぁというのが率直な感想です。身近な大人がコンピュータを「道具」として使う姿も、子供がコンピュータとうまく関わる距離を学ぶ要素になるのではないでしょうか。

よく耳にする話ですが、公的な予算はほとんどハードの導入時にしか摘要されないと聞きます。しかし、導入したハードを活用するためには、ハード同様に管理やメンテナンスなどの運用面にもコスト・時間・スキルが必要になることに他なりません。ソフト的な環境を整備することに関しては民間の企業の方がその意味を深く理解し、導入したハードを活かして収益や効率の面などで効果を上げているように見えます。
しかし、最近、やっとパソコン教育や管理のための補助教員の採用が増えているというニュースも耳にしました。少しずつ良い方向に向かっているのでしょうか。

担当の先生とのお話の中で、今回の試みは教科・学年を越えて先生方が向き合い、1つ1つの教材を評価をする機会を作ることが何よりも大変であったと同時に有意義であったと伺いました。話の通じない(?)コンピュータに処理をさせたり、弊社のように全く別の組織の人間とコラボレートしたことで、先生方が校内の情報を整理し、理解を深め、新たな発見を得たとしたら、それはわたしたちにとっても大きな喜びです。人と話しているうちに、自分の本当にやりたいこと、今すべき事が見えてくるということはよくありますね。もの言わぬコンピュータにはそんな役割が少しあるのかもしれません。

熊野川小学校の環境教育や情報教育への取り組みはすばらしいものが多く、いろいろなお話しを聞くにつけこちらまでワクワクしてきました。有意義な出会いを持てたことをとてもうれしく思います。これをきっかけに、弊社としても、今後様々な形で教育現場でのコンピュータ活用に参加していきたいと思っています。

 

   

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